新・電車内の過ごし方~凝視する~
電車の中での、新しい過ごし方を見つけた。
外の景色をめちゃめちゃ凝視してみる。
ぼんやりと眺めるって感じではなく、もうほんとに、目に飛び込んでくるひとつひとつをじっと追いかけ続けてみる。
そうしてみると、見えないだろうと思っていたものが、案外見えるということに気づく。
例えば線路に面したマンションや家の、部屋の中の様子。
だいぶ陽も落ちて、ぽつぽつとあかりが灯りはじめる時間帯だから、その様子がより一層浮かび上がって見えてくる。
小さなテーブルに突っ伏して寝ている人、夕食の支度をしている家族、誰もいないけれど、蛍光灯だけが点きっぱなしになっている部屋をよく見ると、本棚にずらっと漫画が並んでいることすら確認できた。
ちょうど電車が通りがかるタイミングで「ぽっ」と部屋の明かりが点くのを見かけたりしたときには、自然と「おつかれさま」という言葉が湧いて出てきた。
暖かかったり、少し寂しさを含んでいたり。
それぞれの物語が、現在進行形で進んでいる。
なんでもない、当たり前だと思えてしまう風景も、こうしてみると面白い。
劇的なことは滅多に起こらなくとも、その積み重ねが毎日をつくる。
いろんな人の日常に、勝手に足を突っ込んでいるような気になってきて、ちょっと元気が湧いてくるのかもなあ。
それだけじゃない。
並走する道路を、空から降ってくるかのように降りてくる車、幅の広い川に沿って等間隔に並ぶオレンジ色の街灯、静かなまちの中で空元気を振り絞ってるように見えるパチンコの看板など。
ぼんやりと眺めているのもいいけれど、交差するちょうどそのとき、少し目で追ってみれば、よく見えてくる。
そして、想像が広がる。
最近は本を読んだり、音楽を聴いたり、携帯をいじったりして過ごすことが多かった。
そうしていれば、時間は結構あっという間に過ぎてくれるから。
そんなことを考えているとき、電車はただ単に、僕を目的地へと連れていくための交通手段になっている。
本や音楽やインターネットから、たくさん刺激をもらうこともあるけれど。
過ごし方の選択肢として、車窓から外を眺める、見つめるということも、やっぱりありだなと思った夜だった。
余裕があるときには、またやってみよう。