突っ込むべきか、否か
目の前で、人が泣きはじめた。
僕はどうしたらいいのかわからなくなって、取るものも手につかない。
さっきまでいつものように過ごしていたのに、どうしたのだろう。
理由がわからないと、憶測はどんどん進んでいく。
身内に不幸があったのだろうか。
僕が気づかぬうちに、何か傷つくことを言ってしまったのだろうか。
それとも、僕の予想が全く届かぬところで、何かあったのだろうか。
とにかく心配になって、当たり前のことが当たり前にできない。
とはいっても公衆の面前、ここで切り出したら何かが崩れてしまいそうで、怖くて聞けない。
そんなこんなで、後に持ち込む。
人は本当に、絶妙なバランスを保ちながら生きているものだ。
本当に大事なことなら、そのバランスを崩してでも、突っ込んでみるのもありかもしれない。